人間の体には動きを引き出す「感覚」がある by 朝原宜治『肉体マネジメント』

本の題名だけを見て、ボディービルの本かと思いました(笑)。

日本の短距離陸上の元エース、朝原宜治さんが現役引退後に書いた『肉体マネジメント』に感銘を受けたのでメモ。朝原さんは、20代後半がピークと言われる短距離陸上において、36歳で北京オリンピックに挑み、男子4×100メートルリレーの銅メダル獲得に貢献しました。

本書では、日本を代表するトップスプリンターとして、また、30代後半もなお高いパフォーマンスを出し続けた「年長者」として、衰えない肉体を維持するコツを伝授しています。短距離の選手に限らず、すべてのランナーが読むべき一冊です。

和製カール・ルイス

肉体マネジメント』を読んで初めて知りましたが、朝原さんは学生時代から日本の短距離陸上で抜きんでた存在だったのですね。

  • 高校3年生で走り幅跳びインターハイ優勝
  • 21歳で国体100メートルに出場し、日本新記録を樹立
  • アトランタ五輪(1996)で100メートル、走り幅跳び、4×100メートル出場
  • ローザンヌで100メートルの日本記録を更新

エリート街道をまっしぐら、という感じでスプリンターとしてのキャリアを歩んできた朝原さんですが、1998年から故障が続き、翌年には左足首を疲労骨折してしまいます。

新しいスプリンター朝原

重度の骨折から復帰した2000年、朝原さんにとって大きな変化が2つありました。

ひとつは、活動の場をドイツからアメリカに移し、ドナバン・ベイリーなどの名選手を育てたダン・パフコーチの指導を受け始めます。

もうひとつは、シドニー五輪での出来事。

この大会をきっかけに、「体の中心を意識する」ことが、自分の走りのコンセプトになりました。その後の僕の陸上人生を左右する、大きな「気づき」となったのです。

100メートル走のように、勝負が一瞬で決まる競技は、フォームが非常に重要になります。練習で理想的な走りができたとしても、それが必ずしもレース本番で再現できるとは限りません。

朝原さんは、シドニー五輪で得た「気づき」から、理想的なフォームの再現性を高めるコツがつかめたと言います。

人間の体には、動きを引き出すための「感覚」があることに気づきました。この動きの方が良いという外見的なものではなく、自分の体の内面にある”型”のようなものです。その”型”をしっかり覚えておいて、そこにガチッとはまると良かった動きが再現できる。

ポイントは、フォームそのものを再現するのではなく、フォームが再現される体の感覚をつかむことだそうです。それはとても感覚的で、簡単に言葉で表せるものではありません。そして、各々が自分の体を対話することによって体得できるものです。

先ほど感覚の「再現性」ということを描きましたが、再現させるには、身体のこの部分を意識して、こう動かせばいいというコツのようなものがあります。それが「感覚のスイッチ」です。 

練習メモはつけたほうがいい

ただし、体が感覚を忘れてしまうこともあります。そうならないために、朝原さんは次のような練習メモをこまめに書いているといいます。

  • 〇月✖日 足が伸びた状態で重心がはずむような感じ。足でパウンディングしないで中心ではずむ
  • 〇月✖日 腰やお尻で骨盤を押せるポジションがある。脚だけで走らないようにする

書いた本人でないと意味が解らないものばかりですが、体が感覚的に覚えているので、メモを読み返すことで理想のフォームが再現しやすくなるわけです。

GPS時計で測れないもの

ちなみに、ぼくはレース日誌はつけていますが、練習日誌はつけていません。ガーミンGPS時計をONにしておけば、必要なデータは自動で計測してくれる、という考えです。

ただ、GPS時計で計測されるのは、あくまでも位置情報と時間のみ。最新モデルであれば心拍数も計測できますが、練習のときの「感覚」までは残らないですね。そういう意味では、練習メモって大事なんだなと思いました。

まとめ

以上、長年のあいだ日本の短距離陸上をけん引してきた朝原さんの著書『肉体マネジメント』のエッセンスを紹介しました。

他にも、4×100メートルリレーの面白さと難しさ、海外で活動することのメリットとデメリットなど、長年の経験で得たインサイトや逸話がとても参考になりました。

30歳を過ぎると現役を続けるのが難しくなる短距離陸上の世界で、30代後半まで高いアウトプットを維持してきた朝原さん。年齢を重ねても記録更新を狙いたいランナーは、『肉体マネジメント』を一読すると、何かヒントがつかめるかもしれません。

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【もくじ】

  • 第1章 いかにして重圧に打ち勝ったか
  • 第2章 ケガによって訪れた転機
  • 第3章 速く走る体のメカニズム
  • 第4章 衰えない体を作るトレーニング
  • 第5章 自分の体は自分でマネジメントする
  • 第6章 勝つためのメンタルコントロール
  • 第7章 魂のバトンと引退を決めた理由

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