障害者陸上の世界はあまりにも生ぬるく、甘っちょろく、しみったれていた by『ラスト・ワン』

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義足の女子陸上選手、中西麻耶さんの競技人生を追った『ラスト・ワン』(金子達仁著)を読了。本を手に取ってすぐ、表紙の写真に釘付けになりました。切断された右足をさらけ出し、鏡に映る自分と対峙する中西さん。

以下は、アマゾンの内容紹介より。

中西麻耶は、テニスで国体を目指していた2006年、勤務先での事故で右膝から下を失う大けがを負う。だが退院後、障害者陸上に転向するや、瞬く間に100 m走、200 m走で日本記録を塗り替え、事故からわずか2 年で北京パラリンピックに出場、入賞を果たす。自らの可能性を信じて単身アメリカ武者修行の旅に出るが、活動資金難からセミヌードカレンダーを製作した彼女を待ち受けていたのは、世間からの手酷いバッシングだった……。

自分は「元」健常者アスリート

「義足のランナー」と聞いて真っ先に思い浮かぶのが、オスカー・ピストリウス。南アフリカの陸上選手で、2012年のロンドン五輪では、両足義足にも関わらず、オリンピックとパラオリンピックの両方に出場した、障害者スポーツのスーパースターです。最近では、恋人の殺人容疑で有罪判決を受けて話題になりました。

ピクトリウスの場合は先天性の身体障害のため、幼少の頃から義足を履いてきましたが、『ラスト・ワン』の主人公である中西さんは、21歳の時に事故で右足の膝から下を切断。それまではソフトテニスで全国大会を目指すバリバリのアスリートが、ある日を境に義足を履くことになります

そんな中西さんが右足切断を乗り越え、障害者スポーツの世界で直面したのは「生ぬるさ」でした。

本気で「何もかも元通り」な自分を目指している中西にとって、プロフェッショナル的なスポーツ観が染みついている中西にとって、そして健常者スポーツとともにプレーするソフトテニスで日々打ちのめされている中西にとって、障害者陸上の世界はあまりにも生ぬるく、甘っちょろく、しみったれていた。

実際に中西さんは、右足切断の翌年、100メートル走と200メートル走で早くも日本記録を樹立しています。

この頃の中西さんには、パラリンピッックとそこに出場する障害者アスリートを「上から目線」眺める傾向があったそうです。自分は元アスリートで、普通の障害者とは違う。

本物のアスリートがちょっと本気になったらこんなもんよ?どう?ーーみたいな感じでしたね。

2008年に北京パラリンピックに出場すると、100メートル走で6位、200メートル走で4位の上位入賞を果たしました。決して悪くない結果ですが、世界トップレベルの実力を目の当たりにして、中西さんは人生観を揺るがすほどの衝撃を受けます。

同時に、障害者アスリートとしての自分の「生ぬるさ」にも気づき、競技に本気で取り組むようになったといいます。

障害者スポーツの受け皿

本書では障害者スポーツに対する日米の考え方の違いも浮き彫りにしています。

日本だと、変な話、かわいそうな人たちだからお金を出してあげようか、みたいなところがあるんですけど、アメリカやカナダだと、完全にスポーツとして見てくれて、世界のトップを目指そうというあなたの夢に私たちも乗っけてくれないか、みたいな感じなんです。

平たく言えば、障害者スポーツを同情と見るか、投資と見るかの違い。後者の方がビジネスライクでサッパリしている反面、世界大会で優勝できる可能性がないと契約が打ち切られる(投資の価値がないと判断される)ため、見極めがシビアだと中西さんはいいます。

まとめ

以上、中西麻耶さんの競技人生を追った『ラスト・ワン』(金子達仁著)を紹介しました。

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