『2時間で走る:フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦』- 想像できないものは実現できない

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『2時間で走る:フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦』- 想像できないものは実現できない

人類はフルマラソン「サブ2」の壁を越えることができるのか?

結論からいうと、イエス。エド・シーサ著『2時間で走る:フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦』によると、フルマラソン2時間切りはいつか達成される。しかしそれは、少数のエリートランナーたちが、数秒単位でじりじりと世界記録を更新し続けることで達成される。

プログラミングされた脳

2時間切りへの道のりは「じりじりとしか進まない」とシーサは言いますが、それを裏付けているのが、運動生理学の世界的権威であるティム・ノックスの研究です。ノックスは、世界記録が少しずつしか更新されないのは、ランナーの「脳」にカギがあると考えています。

世界記録が頭に入っている状態で走り始めるのですから、そのタイムより10分も速く走る必要はありません。ランナーの意識は、世界記録より1秒でも速く走ることに集中します。脳もそのことに焦点を絞るのです。走っているあいだ、そういうプログラミングが休みなく行われていて、しかもおそろしく重要な役割を果たしています。

これは確かに説得力があります。なぜならエリートランナーはサブ2を目標にしているのではなく、世界記録を更新することにフォーカスしているのですから。メジャーなマラソン大会になると、わずか1秒でも世界記録を更新するだけで数千万円単位の賞金が貰えたりします。

幻の世界記録がランナーの意識を変えた

本書では、近年のフルマラソン世界記録更新に貢献してきた様々な選手が登場します。テルガト、ゲブレセラシェ、マカウ、ムタイ、キプサング、キメット、キプチョゲ、ベケレ。マラソン好きなら一度は聞いたことがあると思います。

シーサは、その中でもケニア出身のジョフリー・ムタイ(Geoffrey Kiprono Mutai)にスポットライトを当てています。ムタイはフルマラソンの世界記録を一度も更新したことはありません。しかし彼が2011年の「ボストンマラソン」で出した2時間3分2秒は、非公式ながらも、エポックメイキングな出来事でした。

当時の世界記録は、ゲブレセラシェが2008年に出した2時間3分59秒。世界記録更新の余地はまだあるということを、ムタイが証明しました。その後、3年間で3度も世界記録が更新されています。

強烈な想像力が世界記録を生む

かつてはマラソンは持久走だったが、近年の高速化に伴い、高速+持久走が求められるようになってきました。シーサはこれを自動車に例えています。

かつてマラソンランナーには、ディーゼル・エンジンがあればよかったが。だが、いまでは最高レベルの選手はターボ・ディーゼル・エンジンを搭載し、びくともしない持久力と圧倒的な速度とを兼ね備えているいるという。

そして高速持久走で今後ますます重要になるのがランナーの「頭脳」です。

優れた長距離走者をはぐくむ土地の出身の、最も才能に恵まれた選手たちのあいだでは、覇者を決める要因はレースプランを立て、不測の事態に対し、数々の可能性を念頭に置き、敵を出し抜く能力だ。これはレースでの走りに関係してはもちろん、その走りの準備を整える能力に関しても、おそらくなおのこと当てはまる。

高速持久走と化したマラソンは今後ますます「頭脳戦」になるわけですが、さらに世界記録を更新し、サブ2へ近づくためには「脳」を正しくプログラミングすることが重要になります。

サブ2プロジェクト

本書では「サブ2プロジェクト(http://www.sub2hrs.com)」という研究が紹介されていました。フルマラソン2時間切りを科学的に検証し、トップランナーをサポートしていくという取り組みです。過去100年間の世界記録の推移をグラフ化したものが公式サイトに掲載されていますが、これを見ると「サブ2」の壁を破るのは不可能ではなさそうですね。

まとめ

以上、『2時間で走る:フルマラソンの歴史と「サブ2」への挑戦』を紹介しました。一般の市民ランナーが夢見る「サブ3」よりも、さらに1時間早い「サブ2」の世界。かつては不可能と考えられていたフルマラソン2時間切りのカギは、ランニングエコノミーやVO2max、新素材のランニングシューズやウェアではなく、「脳」だというのが衝撃的でした。

ランニングだけでなく、脳科学に興味がある方にもおすすめの一冊です。

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【もくじ】

  • 第1章 ベルリンの壁
  • 第2章 フルマラソン「サブ2」の夢
  • 第3章 ランナー誕生の地
  • 第4章 シティマラソンとランナーのプロ化
  • 第5章 ふたりのランナー
  • 第6章 実りの年
  • 第7章 エリートランナーの科学
  • 第8章 ドーピングの闇
  • 第9章 スランプのなかで
  • 第10章 レースは続く

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