駅伝への傾倒が日本人選手をメダルから遠ざける by 『駅伝マン 日本を走ったイギリス人』

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箱根駅伝のテレビ中継を観ながら『駅伝マン 日本を走ったイギリス人』を読みました。大学駅伝や実業団駅伝をはじめとする「駅伝文化」が日本の長距離陸上界にとって諸刃の剣であるという視点が新鮮でした。

これはむずかしい問題だ。駅伝は選手たちを苦しめ、過剰な練習の元凶になる。その反面、日本を一流ランニング国家たらしめる車輪としての役目を果たしていることは言うまでもない。駅伝が存在しなければ、日本の長距離陸上界のシステムそのものが崩壊の危機にさらされることになるかもしれない。

実業団制度というシステム

ここでいう「システム」とは、実業団制度のことを指します。

実業団制度は、日本の陸上界の根幹を成すものである。このシステムのおかげで、何千人もの選手たちが、競技と生活の両立や仕事探しへの不安やプレッシャーを感じることなく、大学卒業後も練習だけに打ち込むことができる。イギリスであれば、ごく少数のトップアスリートだけが享受できる贅沢な状況だ。

著者アダーナン・フィンの祖国イギリスでは、ランニングだけで生活できるのは一握りの恵まれた選手で、有望な学生ランナーのほとんどが大学卒業ともにランニングシューズを脱いでしまうそうです。

日本では実業団制度が多くの学生ランナーの受け皿となり、フィンから見れば、恵まれ過ぎた環境で、走ることに専念できるわけです。

底知れない選手層の厚さ

駅伝文化のおかげで、日本には世界トップクラスのランナーが大勢います。ある時フィンは、そんな彼らが一同に集まる「上尾シティハーフマラソン」(2013年大会)のユーチューブ動画を観て度肝を抜かれたそうです。

上尾の大会で100位だった学生タイムは1時間4分49秒。これは2013年のイギリス第8位に相当する記録だ。他の多くのヨーロッパ諸国であれば、彼は国内チャンピオンになれることだろう。これはまさに、日本の長距離界の底知れない選手層の厚さを占めすものだった。

しかしながら、選手の層は厚いけれど世界大会でメダルを取れる選手が育たないのも事実。だからこそ、日本の長距離界は「謎」だとフィンは言います。

ケニア人選手の不満 

日本の駅伝チームには外国人選手枠で、ケニアをはじめとするアフリカ勢の選手が在籍していますが、フィンはそんな彼らにもインタビューをして、実業団駅伝チームの内情を探っています。

ケニア人選手に共通してある不満とは、硬い舗装道路での練習、過度の走り込み、スピードワークの不足などが挙げられます。「スピードワークが足りません。トラック練習でも、いつも1キロ2分58秒ペース。それでは遅すぎます」とあるベテランのケニア人選手はぼやいていたそうです。

こういう声は日本のメディアを通して伝わってこないので、ある意味、貴重なフィードバックですね。

日本人選手が世界大会でメダルが獲得できない理由

一番の理由は、駅伝への傾倒だとフィンは言います。ケニア人選手の多くは、世界大会でのメダル獲得を目標にしていますが、実業団に属する日本人選手の多くは、駅伝優勝が最大の目標で、メダル獲得はどうしても二の次になってしまいます。

シニアレベルでの日本選手のハーフマラソンのタイムは、海外選手にしてみれば、練習でのタイムのようなものだ。しかし、日本人選手が実際にどんな能力を持つのか、その全体像を見極めるには、駅伝でのパフォーマンスを精査する必要がある。彼らが心血注ぎ、周到な準備をして挑むのは駅伝なのだから。

まとめ

日本人にとって馴染みの深い「駅伝文化」をイギリス人ジャーナリストの視点で描いた一冊です。フィン自身もランニングを愛するサブ3ランナーで、取材で実業団選手の練習に加わったりと、体当たりの取材が評価できます。

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