どうも!マラソンブロガーのtomo.です。

日本を代表するトレイルランナー、山本健一さんの著書を読みました。マラソンランナーがトレイルランナーから学べることは多い、というのが読み終えた後の感想です。

『トレイルランナー ヤマケンは笑う』(カンゼン、2015)

山本さんは、普段は高校教師と三女のパパとしての顔を持ちながら、毎年国内外のトレイルランニングのレースに挑戦しています。過去にはグランレイド・デ・ピレネーで優勝、アンドラ・ウルトラトレイルで 2位、ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)で 3位など、トレランの世界大会で大きな実績を残しています。

一回のレースで走る距離は約 100マイル。約 160kmの距離を十数時間、時には数十時間かけて走り続けるわけですが、トレラン本の面白はこうした限界への挑戦を垣間見れるところにあります。ページをめくると、まるで VR(仮想現実)ヘッドマウントディスプレイを装着して険しい山道を走っているかのような錯覚に陥ります。

ただ、この本の優れているところは、そうした個人的体験談にとどまらず、限界を超えるためのプロセスというか心構えみたいなものについて言及していること。本書で山本さんが何度も強調している「欲をなくす」「余力を残す」「笑顔で走る」ことの大切さがとても印象に残っています。

欲をなくす

アスリートとして「優勝したい」とか「自己ベストを更新したい」という気持ちを持つことは大切ですが、そうした欲が裏目に出ることもある、と山本さんは言います。

トレイルランニングを始めた頃の山本さんも、欲とは無縁ではありませんでした。しかし、トレイルランナーとしての才能を開花したきっかけは、欲を抑え、欲を打ち消すことができたから。

「人間は100ある本当の力のうち10パーセントも使っていない」と越中さんから何度も話して聞かされていた。その潜在能力を使う際に、ブロックしているのは、考え方や心の部分がとても大きいと。それをいかに外してやるかが、ポイントになる。そのブロックの大きなひとつが、欲だった。まずリラックスのためには、欲をなくしていく必要がある。優勝したいと思えば体は硬くなり、楽しいなと思って走れば、体はゆるんでいく。僕にとっては、走れるだけで満足。走ることができれば、それだけでハッピーだから、欲は限りなく少なくなっていた。

走れるだけで満足。とても、いい言葉ですね。冷静に考えてみると「走れる」というのは非常に幸せなことなのです。健康状態、時間や心の余裕、環境や道具がひとつでも欠けていると、走りたくても走れません。

レースの時には、いつも自分が何位であるかは、認識していない。人と競争することが目的ではなく、自分の潜在能力をいかに引き出すかが目標だから、順位は関係ない。順位を聞いてしまうと、気にしていなかったはずの欲がむくむくと鎌首を上げてもたれかかってくる可能性があるから、サポートのスタッフも誰も口にしない。

これがマラソンでも通用するかと問われれば、答えはノーでしょうね。マラソンでさえ近年はスピードが命。ほんの一瞬で勝負が決まリます。スピードよりも耐久性がモノを言うトレイルランニングだからこそ「欲をなくす」が通用するのだと思います。

ただし、マラソンでも欲が裏目に出ることがあるのも事実。例えば「自己ベストを狙いたい」という欲。目標ペースを意識しすぎてオーバーペース気味になったり、練習しすぎて故障したりという話はよく聞きますし、自分にも経験があります。

そういう時は、「走れるだけで満足」という言葉を覚えておくと良いと思います。

余力を残す

トレイルランナーは十数時間も集中して走り続けられるのかいうと、実際にはそうではないみたいです。山本さんの話だと、おしゃべりもするし、休憩もするし、景色に見とれたりするし、走りに集中しないときもあります。

どれだけ余力を残しながら走ることができるか。それが長い距離を完走するためのコツだと思う。余力があるからこそ、選手同士でおしゃべりもたくさんすれば、星空を見上げて立ち止まることもある。

これはマラソンにも通用しそうですね。特にスタート直後や給水ステーションなど、混雑する場所では無理して走ろうとせず、流れに任せたり、必要に応じて少し立ち止まったりしてみる。その積み重ねが余力を残すことになり、結果的に良い走りができるようになる。

ただし、30時間も走っていれば、睡魔に襲われることもあれば、しばしば幻覚にも誘惑される。睡魔に打ち勝つために、立ったまま眼を閉じて、7秒数えて、また走り出す。ほんの7秒の「睡眠」で、意識を取り戻して走ることができる。

こういう話を聞くと、レース中に少しだけ歩いたり、止まったりするのは「悪」とは言い切れないですね。そういう状況に陥ったとしても気にするべきでないでしょう。

笑顔で走る

これが本書で一番重要なポイント。本書の題名にも「ヤマケンは笑う」と書いてあります。

そして、実は前に紹介した二つの「欲をなくす」と「余力を残す」が出来ていないと、最後の「笑顔で走る」は難しいのではないかと思います。欲があると強ばった表情になりますし、余力がなければ笑顔なんて以ての外ですからね。

そういえば青学の原晋監督も『1日10分走る青トレ』の中で「笑顔で楽しく」走ることの大切さを説いていました。

ちなみに、山本健一さんが2012年の「グランレイド・デ・ピレネー」で優勝した時の映像を見つけました。4分20秒、5分30秒で山本さんの笑顔が見られます!

さいごに、余談ですが

ぼくはトレイルランニングは年に数回しかやりませんが、それでも本書から学ベることはたくさんありました。最近、走ることのモチベーションが下がっている方、あるいは記録が伸び悩んでいる方に特にオススメの一冊です。

『トレイルランナー ヤマケンは笑う』(カンゼン、2015)

本書の目次

  • はじめに
  • 第1章 山の世界に踏み入れる
  • 第2章 夜の闇を走る
  • 第3章 100マイラーが知る幸福
  • 第4章 内なる野生
  • 第5章 進化した自分にゴールで出会う
  • おわりに

著者について

山本健一(やまもと・けんいち)。トレイルランナー/高校教諭。1979年山梨県生まれ。教師である両親の元で幼い頃から山遊びに親しみ、信州大学時代はモーグル選手として活躍。そのトレーニングの一環として山を走っていたことがきっかけでトレイルランニングの世界へ。2012年に日本国内で初めて開催された100マイルレース「ウルトラトレイル・マウントフジ(UTMF)」で日本人最高の3位に入賞。8月末のフランス「グランレイド・デ・ピレネー(ピレネー大耐久レース)」では日本人初の優勝という快挙を果たす。2013年アンドラ・ウルトラトレイル2位等、トレイルランナーとして国内外の数々のレースに挑戦している。妻と三人の娘を持つ35歳。(信州大学ホームページより)

この記事を読んで走りたくなったら

マラソンランナーが、トレイルランナー「ヤマケン」から学べる 3つのこと」を最後までお読みいただき有難うございます。

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