【レビュー】共闘<セオリーを覆す父と娘のコーチング論>(田中健智)
日本の女子中距離界のエース田中希実さんと、父親でコーチでもある田中健智さんの成長物語。コロナ禍やスランプを乗り越えて、日本の頂点に上り詰めていく過程が健智さんの視点で描かれています。

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- 著者:田中健智
- 出版社:ベースボール・マガジン社
- 発売日:2024/7/10
著者について
著者の田中健智さんは1970年生まれ。川崎重工で中・長距離選手として活躍した後、同じく中・長距離選手で妻の千洋さんをサポートするためにコーチ業に転身。それから約20年後、巡りめぐって今度は娘のコーチを引き受けることになります。
「父親兼コーチ」は「夫兼コーチ」とは違った難しさがあり、コーチとして言うべき事、父親として言うべき事のギャップに葛藤する様子が特に印象に残りました。
共感したポイント
本書を読んで共感したポイントを3つ紹介します。
視座を高める
これから戦っていくうえで彼女に一つだけ言っていたことがある。「留学生だからといって特別に思ってはいけない」ということだ。
海外の選手には「勝てない」と最初から諦める選手が多い中、健智さんは希実さんに留学生の先頭集団で勝負することの重要性を説きます。日本基準ではなく世界基準へ視座を高めることで、世界の舞台でトップ選手と対等に戦えるようになる。また、世界のトップを目指すぐらいじゃないと、そもそも日本のトップになれないという意味も込められていると思いました。
トレーニング論
最初からゴールタイムをイメージするのは難しいが、単純に計算すると1000メートルを3分フラットで走るのを積み重ねていけば、15分00秒になる。つまり、400メートル72秒、100メートル18秒。このタイムで押していける力を、3000メートル、4000メートルと伸ばしていけばいい。例えば、5000メートルを300メートルや400メートル、1000メートルで割り、そのタイムで走るのを繰り返すような練習をさせていた。
本書で何度か触れられている健智さんのトレーニング論はここに集約されています。目標タイムをイメージできるよう、距離を分割してそのタイムで走るのを繰り返す。それが楽に繰り返すことができれば、走りの再現性も高まる。自分のような市民ランナーでも簡単に実践できる考え方だと思いました。
プロ活動の資金
私たちは自由に海外を飛び回っているように見えるかもしれないが、プロ活動の資金はそこまで潤沢ではなく、余計なお金を使うことはできない。一つひとつの海外遠征が「貴重」な経験だ。逆に日本でもできる練習ならわざわざ海外に行かず、地元の小野市の競技場やクロカンコースを上手く活用すれば良いのだ。
プロランナーの世界は華やかに見えても、現実はシビア。資金がなければ活動できません。健智さんは希実さんにそういう現実に目を向けてもらうために、合宿や遠征にかかった費用の領収書をまとめる事務作業を本人に行わせているそうです。
評価まとめ
ニュースやインタビューでは見られない希実さんの意外な一面や、プロ転向したアスリート(とサポートスタッフ)の苦労などを垣間見ることができます。
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