【レビュー】Asics ゲルカヤノ32:原点回帰。安定感が神レベル
前作「ゲルカヤノ31」はゲルカヤノの良さが失われてガッカリしましたが、2025年6月に発売された「ゲルカヤノ32」はゲルカヤノらしさを取り戻しました。




32代目のゲルカヤノシリーズ
ゲルカヤノ(GEL-KAYANO)は1993年に誕生したAsicsのランニングシューズのフラグシップモデル。フルマラソンなど長時間の走行で安定性の高い走りをサポートし、国内外のランナーに支持されています。
自分は29代目の「ゲルカヤノ29」から毎年新作モデルを履き継いでいます。主に10km程度のジョギングから20〜30kmの長距離走で着用しており、2023年には茨城県の霞ヶ浦1周(130km)をゲルカヤノと共に走破したのは良い思い出です。
Asicsの「ゲルカヤノ32」が到着!29→30→31と履き続けて、ついに4代目 pic.twitter.com/WZtfgST01u
— ともらん!マラソンブログ (@tomorunblog) June 14, 2025
そして2025年6月にシリーズ32代目となる「ゲルカヤノ32」が発売され、速攻で注文しました。前作から進化した点などを含め、詳しく見ていきたいと思います。
ゲルカヤノ32の特徴
Asicsの「ゲルカヤノ32」の主な特徴は次のとおり。
- ミッドソールはFF BLAST PLUSとPureGELを搭載
- 安定性と快適性に優れた4D GUIDANCE SYSTEMを継承
- アッパーはエンジニアードメッシュを採用
- アウトソールはHybrid ASICSGRIPを使用
- 重量は270g(メンズ25.5cm Ex Wide実測値)
- ドロップは8mm(ヒール40mm/前足部32mm)
- 定価は22,000円

ミッドソールには「FF BLAST PLUS」フォームを搭載しており、ヒールの部分のスタックハイトが40mmとなる厚底シューズに仕上げています。ドロップは8mm。ヒール部分の内側には衝撃吸収剤の「PureGEL」を内蔵し、クッション性能を高めています。

靴底は接地面積が広く、アウトソールは中足部にグリップ性能の高い「ASICSGRIP」、つま先・カカト部に耐摩耗性に優れた「AHARPLUS」を組み合わせた「HYBRID ASICSGRIP」を採用。凹凸のあるアウトソールはグリップ性能に優れているだけでなく、衝撃を吸収する役割も担っています。

アッパーはエンジニアードメッシュを採用し、アンクルパッドはクッションが多め、シュータンは厚さが控えめに仕上げています。シュータンは内側でシューズと一体化したガセットタン形式です。

重量は、メンズ25.5cmエキストラワイドの実測値が270gでした。
サイズとフィット感
「ゲルカヤノ32」はさすがフラグシップもでるだけありバリエーションが豊富。シューズの横幅も通常(スタンダード)タイプとエキストラワイドタイプが選べます。
自分の場合、ランニングシューズ選びでは普段、通常タイプなら26.0cm、ワイドタイプなら25.5cmがジャストサイズとなります。

今回は前作と同じ、エキストラワイドの25.5cmを選びましたが、自分の足に完璧にフィットしました。特に足首周りのフィット感が素晴らしいですね。分厚いアンクルパッドが足首を隙間なく包み込んでくれます。
ファーストインプレッション
ここからは実際に「ゲルカヤノ32」をランニングで履いてみて気づいた点を、忖度なしでコメントしていきます。
反発力が強い

クッションはあまり沈み込まず、やや硬めの印象。しかし反発力は高く、蹴り出す際にグイグイ前に進む感じは快感すら覚えます。自分の場合、4:30/kmぐらいまでなら快適にペースアップできました。ジョギングはもちろん、少しペースアップしたい時にもキビギビとギアチェンジに対応してくれます。
安定感が神レベル

ゲルカヤノと言えば、昔から走行安定性の高さに定評があります。中でも「ゲルカヤノ30」から採用された「4D GUIDANCE SYSTEM」は秀逸。広がりを持たせたミッドソール、アーチ部分に配置された高反発フォーム、ヒール部分の絶妙な傾斜、接地面積を広げたアウトソール。これらがお互い補完し合うことで、長時間にわたり安定した走りをサポートしてくれます。
アキレス腱の保護性能が嬉しい

「ゲルカヤノ32」のアンクルパッドはアキレス腱があたる後方が最も分厚いのが特徴。自分はランニング中にアキレス腱を痛めやすいため、手厚い保護は非常に有難いですね。
シュータンが秀逸

前作「ゲルカヤノ31」は分厚いシュータンでしたが「ゲルカヤノ32」では薄型にアップデート。足の甲のカーブにピタリとフィットするよう工夫されており、ガセットタンとの相乗効果で素晴らしいフィット感を生み出しています。
グリップ性能は微妙

小雨が降る中を「ゲルカヤノ32」で走る機会がありました。アスファルトだと路面をしっかり捕捉してくれるのですが、濡れたタイルの上だと接地の際に数mm単位のズレがあり、グリップ力に物足りなさを感じました。やはり凹凸の大きなアウトソールだと雨には弱いですね。
ゲルカヤノ31と比較
前作の「ゲルカヤノ31」とも比較してみましょう。基本的なスペックの比較を以下の表にまとめました。
ゲルカヤノ32 | ゲルカヤノ31 | |
---|---|---|
発売 | 2025年6月 | 2024年7月 |
定価 | 22,000円 | 20,900円 |
ミッドソール | FF BLAST PLUS、PureGEL | FF BLAST PLUS ECO、PureGEL |
アウトソール | Hybrid ASICSGRIP | Hybrid ASICSGRIP |
アッパー | メッシュ | メッシュ |
重量 | 270g | 289g |
まず重量を見ると「ゲルニンバス32」は19gほど軽量化しています(いずれもメンズ25.5cmエキストラワイドの実測値)。

写真は左が「ゲルカヤノ32」、右が「ゲルカヤノ31」です。ミッドソールは「FF BLAST PLUS ECO」から「FF BLAST PLUS」にアップデート。実際に履いた感触としては「31」のクッションは柔らかめで沈み込み、「32」は硬めで反発力を強く感じます。どちらかというと「32」は「30」のクッションに近い感触ですね。

靴底を見ると両者の違いがよく分かります。「31」は全体的に接地面積が大きく、特にヒールと中足部の部分は「32」よりも幅があります。しかし、ただ広ければ良いという訳ではなく、「31」は安定感が増した以上に俊敏さが失われ、「30」に比べると扱いにくいシューズになりました。

Asicsがそれを問題視していたのか分かりませんが、「32」は「30」に近いフォルムに戻っています。上の写真は左が「32」、右が「30」です。これでも接地面積は十分広く、安定感も十分高いと感じます。

アッパーにも注目すると「32」は「30」に原点回帰していることが分かります。上の写真は左から「32」「31」「30」と並び、1番右は「ゲルニンバス27」です。「31」はアンクルパッドの構造がゲルニンバスに寄せていますが、「32」は「30」に寄せています。プルタブのみ「31」から継承していますが…。
ゲルニンバス27と比較
参考までに、ゲルカヤノシリーズと同じく人気のゲルニンバスシリーズとも比べてみましょう。最新作「ゲルニンバス27」の基本的なスペック比較を以下の表にまとめました。
ゲルカヤノ32 | ゲルニンバス27 | |
---|---|---|
発売日 | 2025年6月 | 2025年2月 |
定価 | 20,900円 | 19,800円 |
ミッドソール | FF BLAST PLUS、PureGEL | FF BLAST PLUS ECO、PureGEL |
アウトソール | HYBRID ASICSGRIP | HYBRID ASICSGRIP |
アッパー | メッシュ | メッシュ |

写真は左が「ゲルカヤノ32」、右が「ゲルニンバス27」です。いずれもドロップは8mmですが「ゲルカヤノ32」はヒールのスタックハイトが40mmなのに対し、「ゲルニンバス27」は43.5mmもあります。ラテン語で「雲」の意味をもつ「ニンバス」という名前だけあり「ゲルニンバス27」は雲に包まれるような穏やかなクッショニングが特徴。ジョグ〜スロージョグが最も気持ちよく走れます。

アウトソールは同じ「HYBRID ASICSGRIP」を採用しつつ、構造が全く異なります。「ゲルカヤノ32」は凹凸が大きく、路面をガッチリ捕捉する感覚。対して「ゲルニンバス27」はフラットで足をポンと地面に置いていくような感覚。
評価まとめ
以上、Asicsの「ゲルカヤノ32」をレビューしました。良い点、気になる点のまとめは次のとおり。
良い点
- 走行安定性能が神レベル
- 反発力が高く、ギアチェンジも簡単
- 足首周りのホールド感が素晴らしい
気になる点
- 雨だと滑りやすい
「ゲルニンバス30」から「31」へのモデルチェンジでは直ガッカリしましたが、「32」では「30」に原点回帰するような形で、再びゲルカヤノ本来の良さを実感できるシューズに仕上がっています。
