《東京マラソン》のSWOT分析と経営改革プラン。課題は、収益源とイベントの分散化

《東京マラソン》のSWOT分析と経営改革プラン。課題は、収益源とイベントの分散化|ともらん

東京マラソン財団が発表した「経営改革プラン」をもとに、東京マラソンの運営に関する舞台裏や財布事情、そして今後の展望を読み解きます。
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東京マラソンの運営母体である「一般財団法人 東京マラソン財団」の公式サイトは、一見すると地味ですが、東京マラソンの運営に関するコンテンツが豊富です。

事業計画、財源、役員人事、業務委託契約など、日本最大のマラソン大会がどのように運営されているのかを学ぶことができます。

中でも個人的に面白いなと思ったのが、2018年6月に発表された、東京マラソンの「経営改革プラン」。資料は一般公開されており、誰でも無料で閲覧可能です。

参照:一般財団法人東京マラソン財団経営改革プラン(PDF)

スポーツイベントとはいえ、マラソン大会も健全なる経済活動なくしては成り立ちません。東京マラソン財団が何を考え、どこへ向かおうとしているのか?

大事なポイントをわかりやすく解説します。

東京マラソンの収益

まずは、気になる東京マラソンの「財布事情」を見ていきましょう。

平成28年(2016)年度の少し古いデータになりますが、以下は東京マラソンの収益の内訳です。

東京マラソンの収益
東京マラソンの収益(平成28年度)ーー公式サイトより

年間収益約39億円の内訳の6割を占めるのが「協賛金収益」。いわゆるスポンサー収入ですね。

日本最大かつ国際的にも知名度の高いマラソン大会ということもあり、名だたる企業がスポンサーに名を連ねています。

事前受付を行うEXPO会場は、まさにスポンサー企業のワンダーランドでした。

関連記事:《東京マラソン》EXPO 2018に行ってきた!事前受付・参加Tシャツ・出展ブースなど

東京マラソンEXPO会場
東京マラソンEXPO会場

2番目に大きな収益の柱が「参加料収益」で、全体の12%を占めています。いわゆるエントリー料金です。3番目に大きな収益が「都分担金等」に分類される、東京都から入るお金です。

東京マラソンの費用

次に、東京マラソンの費用を見ていきましょう。費用は、事業費(96%)と管理費に分かれます。

東京マラソンの費用
東京マラソンの費用(平成28年度)ーー公式サイトより

費用の半分以上が「依託費」に分類されていますが、大会運営に必要な業務委託になります。

業務委託契約に関する別の資料によると、以下の企業が業務委託を請け負っています。

  • アールビーズ(運営補助)
  • シミズオクト(設営・撤去など)
  • 電通スポーツパートナーズ(車両・給水・輸送など)
  • セコム(警備)
  • 電通(交通規制広告)
  • フジクリエイティブコーポレーション(広報)
  • フロンティアインターナショナル(企画運営)

参照:2017年度契約結果(PDF)

それから気になるのが「選手招聘費」の1億1千万円。東京マラソンは世界最高峰のマラソン大会ですから、世界トップレベルの選手を招待する必要があります。

東京マラソンのSWOT分析

「経営改革プラン」を読み進めていくと、東京マラソンの「SWOT分析」をまとめたページがあります。

SWOTとは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字をとった略語。

組織や個人が置かれている環境を強みと弱み、機会と脅威の4つのカテゴリで分析する手法を、「SWOT分析」と言います。

プラス要因 マイナス要因
内部環境 強み 弱み
外部環境 機会 脅威

つまり、このSWOT分析を見れば、東京マラソンの現状と将来進むべく道が見えてくるということです。

それでは、強みと弱み、機会と脅威をひとつずつ見ていきましょう。

東京マラソンの「強み」

以下は「経営改革プラン」より。

  • 人的資源 選手招聘、競技運営、ボランティア等のノウハウを有する職員の存在
  • 物的資源 好記録の期待できる高速コース、50 万人を超える会員データ
  • 財務的資源 多額の協賛金、ロゴ等の商標権
  • その他 知名度、アジア圏唯一の AbbottWMM 世界6大メジャー大会であるブランド力、世界大会の選考レース

一言でいうと、日本最大かつ世界最高峰のマラソン大会としての圧倒的なブランド力が強みですね。

東京マラソンのEXPO会場
東京マラソンのEXPO会場

東京マラソンの「弱み」

以下は「経営改革プラン」より。

  • 人的資源 マーケティングなどスポーツビジネスのノウハウを有する職員がいない、建築確認やシステム関連の調整などに必要な技術職員がいない(委託頼み)、経営管理部門に団体固有職員が少ない
  • 物的資源 主要事業が年1回の東京マラソンのみ、スタート・コース・フィニッシュのいずれからもオフィスが遠い
  • 財務的資源 不安定な収入である協賛金に頼っており、その他の安定的収入が少ない(収益に占める協賛金の割合が約 68%)、協賛企業には業種ごとに排他的権利を付与しており、新規企業を獲得する余地が少ない、安全対策費等の不可欠な経費の増大(ボストンマラソンでのテロ事件以降、2億円未満⇒4億円以上と倍以上に増加)

これはなかなか深い分析ですね。

主事業であるマラソン大会の運営は、外部企業に委託し、自らノウハウを持っていない。また、マラソン大会は年に1回しか行われない。

スポンサー収入に依存しすぎているのも短所のひとつ。さらに、警備や手荷物検査など安全対策用の費用もかさみます。

東京マラソンの手荷物検査
東京マラソンの手荷物検査

東京マラソンの「機会」

以下は「経営改革プラン」より。

  • 社会経済 好景気に伴う企業業績改善等による協賛金収入の拡大
  • 社会変化 2020 年オリ・パラに向けたスポーツムーブメントの上昇
  • ニーズ 毎年の申込者数の増加(5年前と比べ 2017 大会では約 13.6%増加)
  • 競合他者 国内では最大規模

一言でいうと、東京マラソンに魅力を感じて、スポンサーも右肩上がりで増え続けることが予想されます。

東京マラソンのフィニッシュ地点
東京マラソンのフィニッシュ地点

東京マラソンの「脅威」

以下は「経営改革プラン」より。

  • 社会経済 不景気に伴う企業業績低下等による協賛金収入の減、2020 年オリ・パラ以降の低成長予測
  • 社会変化 大規模イベントを狙ったテロの頻発、全国的なランニング人口の減(2012~16 年の4年で 100 万人以上の減※笹川スポーツ財団調査)
  • ニーズ 抽選に当選しないことによる有料会員からの退会、会員数全体の増加率の低下(直近増加率推移 49%⇒26%⇒16%⇒13%⇒10%)
  • 競合他者 世界トップレベルのチャリティとの差(寄付金額 ロンドン 約80億円、東京 約4億円)、アジア圏の国際大会の存在(シドニー、上海など)
  • その他 積雪による大会中止の恐れ、大都市の公道使用による影響(限られた設営スケジュール、交通規制可能時間、道路工事、公共インフラの事故など)、大人数の警備員・誘導係員(約6千人)が必要となる人員確保の問題、定員(36,000 人)のキャパシティ上限

こちらもなかなか深い分析です。

日本のランニング人口が減少すれば、将来的に参加者も減る可能性があります。

世界からランナーが集まるのではないか?という考えもありますが、東京マラソン以外の国際大会の魅力度がアップすれば、参加者数の減少につながります。

東京マラソンの経営改革

経営改革の詳細なプランは資料に書いてありますが、要点をまとめると次のようになります。

  • スポンサー収入以外の収入源の確保
  • 東京マラソン以外のイベント開催
  • チャリティー事業の育成

日本最大かつ世界最高峰のマラソン大会として知られる東京マラソン。絶好調のように見える大会運営も、裏側ではいろんな悩みや苦労があるようです。

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