高野山参詣道:慈尊院〜奥之院の22kmトレイル
和歌山県にある日本仏教の聖地「高野山(こうやさん)」でトレイルランニングしてきたので紹介します。
今回は走ったルートは、高野山の麓にある慈尊院と山頂の弘法大師御廟を結ぶ「高野山参詣道」。定間隔で町石と呼ばれる道標が置かれていることから「高野山町石道」とも呼ばれます。
全長22km、標高差800mのコースは、1000年以上も前から人が行き来していました。
日本有数のスピリチュアルスポットでもあるので、高野山参詣道を駆け上がり弘法大師御廟でお参りしてくれば、疲れた心が癒されるかもしれません。
当ブログでは広告を利用していますが、紹介するランニングアイテムはすべて自費で購入し、忖度なしでレビューしています。
目次と内容
アクセス
高野山参詣道は、和歌山県にある日本仏教の聖地・高野山の参詣道です。
登山口の慈尊院と山頂の弘法大師御廟を結び、全長約22km、標高差約800mの登山道でもあります。
登山口は和歌山県伊都郡九度山町の慈尊院の近くにあります。最寄駅は、こうや花鉄道の九度山駅。
今回は2017年12月に高野山参詣道を走ってきました。
大阪市内のホテルで前泊し、なんば駅、橋本駅、極楽橋駅を経由して九度山駅を目指します。電車での移動だけで2時間弱もかかりました。
コース
高野山参詣道の詳しい登山ルートは、わかやま観光情報」の公式サイトからでPDFを無料でダウンロードできます。
慈尊院から弘法大師御廟までの距離は約22km、標高差は約800mあります。以下は現地で見つけたルートマップです。
九度山駅からスタート地点の慈尊院に向かい、一気に上り切るのが定番ですが、全長22kmが長すぎるのであれば、上古沢駅や紀伊細川駅からコースの中腹に合流するのもありですね。
高低差は以下のとおり。コース序盤と「大門」に向かう坂は傾斜がキツくて歩いてしまいましたが、それ以外は緩やかなアップダウンが続きます。
高野山参詣道1000年以上も前から人が行き来し、道中には109m毎に「町石」と呼ばれる道しるべが置かれているため、高野山町石道(こうやさんちょういしみち)とも呼ばれています。
以下は現地案内板の解説です。
麓の慈尊院から高野山へ通じる180町(胎蔵界)と壇上伽藍から弘法大師御廟までの36町(金剛界)を高野山町石道といい、弘法大師(空海)が高野山を開創されたとき、1町(109m)ごとに木製の卒塔婆を建てて道しるべとした道で、鎌倉時代には覚きょう上人の発願により、朽ちた木製の代わりに20年の歳月をかけて石造りの五輪塔形の町石が建てられた。
こちらが109mごとに建てられている卒塔婆です。慈尊院から山頂まで180町、壇上伽藍から弘法大師御廟まで36町あります。これを数えて走り始めましたが、途中から分からなくなりました。
今回は長丁場なので、以下の4つのエリアに分けてコースを紹介します。
- 慈尊院〜六本杉
- 六本杉〜矢立
- 矢立〜大門
- 大門〜弘法大師御廟
慈尊院〜六本杉
慈尊院から六本杉までの距離は4.7km。町石で数えると「180町」から「136町」までとなります。
まずは高野参詣道の起点である慈尊院で安全祈願してきました。
慈尊院は弘法大師の母公のゆかりの地でもあります。「我が子が開いている山を一目見たい」と弘法大師の母親が訪ねてきた際に、当時の高野山は女人禁制であったため、弘法大師の元には行くことができず、この慈尊院で暮らしたと伝えられています。
慈尊院には、子授け、安産、乳癌完治などを願って乳房型の絵馬を奉納する習わしがあり、最初に見たときはドキッとしました。
慈尊院の脇道から高野山町石道が始まります。最初は味気ない細いコンクリート道を上ります。
しばらく走ると竹やぶに囲まれた山道に入ります。
再びコンクリートの道へ。急勾配なので走り続けるのがキツいですね。一気に高度を上げていきます。
あっという間にこの高さ。展望台からの景色に思わず見惚れてしまいました。
途中、みかん畑の中を通過。みかん一袋が100円って、安すぎませんか……。でも荷物になるので今回はスルーします。
これが道なのか?と思うほど細い道を進んでいきます。標識がなければ完全に見過ごしていました。
みかん畑を抜けて、山道に入ります。
登山道っぽくなってきた! #高野山トレイル pic.twitter.com/KIly2CFU3v
— tomo.run|マラソンブロガー (@tomorunblog) December 16, 2017
しばらく山道を走り続けると榧蒔石(かやまきいし)と呼ばれる奇石を発見。
現地案内板によると、弘法大師が通りかかった際、当時の集落の貧しさを見かねて、この石の上から榧(かや)の種を蒔き、この地は榧の木材で大いに栄えたという言い伝えがあります。
さらに銭壷石(ぜんつぼいし)と呼ばれる石も発見。小銭がジャラッと置いてありました。
北条時宗の外戚である安達泰盛が、この石の上に置いた壺に給金を入れ、作業員につかみ取りをさせて与えたという伝承があります。
雨引山分岐までたどり着きました。六本杉まであと2km。
細い山道を走り続けます。
— tomo✈︎マラソンブロガー (@tomorunblog) December 16, 2017
道幅は人がひとり通れる程度。
高野山町石道を走っていると必ず目にするのが、町石と呼ばれる石造りの卒塔婆(道しるべ)です。109m毎に置かれているので、数えながら走る楽しみがあります。
以下は「149町」から「148町」までを動画で撮影した様子。山道とはいえ、100mなので30秒もあれば1町分を走れます。
道しるべ。149町から148町へ #高野山トレイル pic.twitter.com/vTcQcvd0Gj
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ひとつずつお参りする人もいるそうですが、今回はトレイルランニングなので軽く会釈して通り過ぎます。
六本杉〜矢立
六本杉から矢立までの距離は8.6km。町石で数えると「136町」から「60町」まで。
六本杉から1kmほど緩やかな坂を上っていくと古峠を越えます。その先には、二ッ鳥居と呼ばれる、石造りの鳥居が2つ建ち並ぶ奇妙なスポットがあります。
しばらく緩やかな坂道が続く。道幅は狭く、一歩踏み外せば崖の下。恐ろしいですね。
— tomo✈︎マラソンブロガー (@tomorunblog) December 16, 2017
山道の脇に「白蛇の岩と鳥居」と書かれた看板を発見。この岩でお参りをして白蛇の姿を見ると幸せになるとか。
しばらく走り続けると、「紀伊高原ゴルフコース」に合流。弘法大師の時代から、いきなり現代にタイムスリップしました。
ゴルフ場の先にある神田地蔵堂で記念スタンプ。最小限の荷物で来たのでスタンプを押すものがなく、手の甲にスタンプを押しました。
しばらく走り続けると笠木峠に到着。
ここから山道がさらに細くなり、足場も不安定になります。
だんだん狭く、険しくなってきた #高野山トレイル pic.twitter.com/udFFMa5Il1
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町石「66町」まで来ました。矢立まであと残すところわずか。
矢立で一旦自動車道に出ます。売店、レストラン、自販機、バス停などがあるので、休憩するにはちょうど良い場所ですね。
矢立〜大門
矢立から高野山の大門までの距離は5.8km。町石で数えると「60町」から「6町」まで。
<>六本杉〜矢立は緩やかな坂が続く走りやすいコースですが、矢立からはガチなトレイルランニングコースが始まります。吸い込まれるかのように、山奥の中へと入っていきます。このエリアの最大の見所は、弘法大師の「伝承三石」として知られる「袈裟掛石」「押上石」「鏡石」。中でも最初に目にする袈裟掛石(けさかけいし)は、高野山の清浄結界を張る重要な役割を担っています。
つまり、ここから高野山の「聖域」に入ります。気を引き締めて走り続けると、今度は押上石(おしあげいし)があ目に留まります。
弘法大師の母親が結界を乗り越え入山しようとした時、激しい雷雨が母親を襲い、親孝行の弘法大師はこの大盤石を押し上げ母親を隠まったと言い伝えられています。
この辺りから傾斜がきつくなり、走り続けるのが辛くなってきました。
そんなときは町石を数えながら走るのがおすすめです。
42町から41町へ。高野山の結界のなかに入りました。#高野山トレイル pic.twitter.com/6oFDbMVlyu
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弘法大師の「伝承三石」の3つ目は鏡石(かがみいし)です。表面が鏡のように平らなことから鏡石と呼ばれ、この石に向かって真言を唱えると心願成就するといわれています。
。疲労で足がフラつき、真言を唱える余裕はありません。小川に沿ってひたすら走り続けます。
「24町」まで来ました。大門まであと2kmちょっと。
ラスト1kmは本当にキツかったですね。急勾配でとても走れる状況ではなく、歩きながら大門を目指します。
まるで追い討ちをかけるように「クマ出没」の張り紙を発見。外国人観光客が多いのか、英語で「Beware of Bears」と書かれていました。
最後の階段を上がると、大門の正面に出ます。その姿に思わず「おぉー!」と声を上げてしまいました。
高野山大門に到着! #高野山トレイル pic.twitter.com/4AxqI8r9uv
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大門は高野山の入口にそびえ立つ高さ25.1mの門。開創当時は現在の地より少し下った九十九折(つづらおり)谷に鳥居を建て、それを総門としていたそうです。しかし山火事や落雷等で焼失し、現在の建物は1705年に再建されました。
大門〜奥之院
大門から奥之院(弘法大師御廟)までの距離は4.1km。町石で数えると、大門から壇上伽藍まで「6町」、壇上伽藍から御廟まで「36町」です。
ここからはフラットなアスファルト道が続きます。
高野山は日本有数の仏教都市であると同時に、世界各地から観光客が集まる世界遺産でもあり、コンビニやレストラン、売店や宿泊施設などが揃っています。
走り始めてすぐに壇上伽藍(だんじょうがらん)に到着。弘法大師が高野山を開創した際に、真っ先に整備された場所です。
壇上伽藍は、胎蔵曼荼羅の世界を表していると言われており、奥の院と並ぶ信仰の中心。高野山町石道はここ壇上伽藍を起点に慈尊院へ180町、弘法大師御廟へ36町の道のりを結びます。
ちょうどお寺の鐘が鳴っていました。
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ここから弘法大師御廟まで、新たに36町の高野山町石道が始まる。標高900メートルだけあって、気温は2.5℃。所どころに雪が残っています。
走り始めて間も無く、今度は金剛峯寺の横を通りかかりました。時間がないので観光せずにスルー。
高野町の中心部に来ました。建物がシックなデザインで統一されています。
弘法大師御廟へ行く前に腹ごしらえするため、南山料理「いけだ」で天ぷらうどん定食をいただきました。
高野山参詣道もいよいよラストステージに入ります。ここからは日本で最もスピリチュアルな場所といわれる高野山奥之院の敷地内へ。
奥之院には、歴史上の有名人仏の墓碑がズラリと立ち並んでいます。入口付近は諸大名の墓碑が多く、こちらは加賀前田家のお墓。
こちらは薩摩島津家。最初は「すごい!」と立ち止まっていたが、あまりにもビッグネームの墓跡が多すぎて、毎回立ち止まっていたら日が暮れてしまいます。
どんどん奥へと進んでいく。
高野山 奥の院のみち #高野山 pic.twitter.com/3lOEBqtE22
— tomo✈︎マラソンブロガー (@tomorunblog) December 16, 2017
本当に不思議な場所で、まるで時間が止まっているかのようだった。
奥之院の墓碑の多くは五輪塔と呼ばれる形をしています。仏教では「宇宙は、空・風・火・水・地の五つの要素から構成されている」と考えますが、五輪塔はこの五つの構成要素を宝珠・半月・三角・円・方形にかたどっており、それぞれの部分にサンスクリット文字(梵字)で空・風・火・水・地が刻まれています。
上の五輪塔にも円には「水」、方形には「地」の文字がうっすらと見えた。ちなみに、高野参詣道に建つ「町石」も実は五輪塔の形をしています。
戦国武将の墓碑もたくさんありました。こちらは織田信長の墓碑。意外と質素ですね。
弘法大師御廟は奥之院の最深部にあります。手前の「御廟の橋」から先は写真撮影が禁止されていました。
ここからは脱帽し、歩いて弘法大師御廟へ向かいます。御廟参拝のあとは、お守りと開運厄除のお札を自分と家族と知人用に購入しました。高野山奥之院のお守りならご利益がありそうですね。
走った後は、高野町の名物の「やきもち」をいただきました。
おまけ
最後に、高野山参詣道を走る上で役立つ情報をまとめます。
トレランシューズは必須
全体的に走りやすいコースとはいえ、足場の悪いエリアもあるので、トレイルランニングシューズを履いていくと安心です。
クマ除け鈴も持っていこう
現地に「クマ出没」の張り紙があったので、念のため熊よけの鈴を持っていきましょう。
走行時のマナー
高野山町石道は歩いて登る方たちも多いので、走行中はくれぐれも歩行者の邪魔にならないように注意しましょう。今回は12月のオフシーズンに走ったので、慈尊院〜大門ですれ違ったのはたったの4人だけ。冬はトレイルランニングにおすすめの時期かもしれません。